2006-04-01から1ヶ月間の記事一覧

ゴールデンウイーク

明日より、五日ほど北京に旅行するので、ブログの更新はお休みします。初めての北京で、いろいろと中国についての情報を仕入れてきたいと思います。

「たけくらべ」その他

樋口一葉「たけくらべ」「十三夜」、国木田独歩「竹の木戸」「富岡先生」、前田愛「こどもたちの時間」「街の声」などをぱらぱらと。一見似たような印象で受けとられがちな一葉の文体が、じつはそれぞれかなり異なった感触を持っていることがわかった。よく…

総力戦体制とシステムの支配

1959年に筑摩から出版された『近代日本思想史講座』の第一巻を読む。家永三郎を責任者として、鶴見俊輔、猪野謙二、橋川文三などが分担して執筆している(前書きは竹内好が書いている)。一番おもしろかったのは、藤田省三による第三編第三章「天皇制のファ…

『姿三四郎』『楊貴妃』

黒澤明のデビュー作『姿三四郎』。1943年の作品だが、当時の時代の雰囲気を感じさせるようなものは微塵もない。黒澤のすべての作品の中でも、もっとも明るくのびやかなもののひとつではないだろうか。国策にそわない部分をスタッフが関知せぬまま削られ、戦…

上野英信『追われゆく坑夫たち』

1960年出版の岩波新書。著者の上野英信については、現在雑誌『未来』で連載中の道場親信の「倉庫の精神史ーー未来社在庫僅少本で読む〈戦後〉」に詳しい。上野は京都大学支那文学科を中退後、炭坑に入って労働者として働く傍ら、炭坑労働者たちのルポルター…

カントと「心身問題」

カントを、主客二元論者としてみることは誤りだと思う。たとえば、彼はいわゆる「心身問題」を問題ではないと一蹴する。「心身問題」というのは、私たちの精神と、身体との構造的な対応、つまり、自分が手を挙げようと思ったときに、どうして手が挙がるのか…

『監獄の誕生』

なにを今さら、といわれるのかもしれないが、フーコーの『監獄の誕生』を読み始めた。ドゥルーズの『フーコー』に促されてだった。『監獄の誕生』には、マルキ・ド・サドもかくやと思わんばかりの残酷な極刑描写(車裂き、腕の切断、死体の寸断etc.)がとこ…

システムと多様性

松永正義氏の語録をもうひとつ。今度は「台湾から見た中国ナショナリズム」(『現代思想』2001.3)より。 松永氏は、まず中国の多元性を強調する。民族、言語(これは漢民族のなかでの言語の違いを含む)、文化、遺伝子レベルまで、中国社会はきわめて多様性…

民衆のいないナショナリズム

松永正義「日本における台湾研究の歴史的位置」(『ポスト〈東アジア〉』)より。 七〇年代は高度経済成長の時期で、それにともなって台湾の社会構造が大きく変化する。農業の占める割合が減って、サービス産業が増え、中産階級がふくらんでくる。そうすると…

まったく、同感です。

溝口雄三「日本人にとって中国研究とは何だったのか?」 日本人の多くが中国の「体制」をほとんど日本の空間意識で、感覚していますね。中国では「体制」が隙間だらけで、官僚個人の権限領域つまり「人治」の問題とみなしうることを、日本流の組織的な体制感…

中国、八十年代の思想風潮

賀照田は、自分の知的な歩みをふりかえってこう述べている。 私自身の見聞からいうと、八〇年代中期以降、中国革命と社会主義の実践を否定する空気が、少なくとも北京の大学界では主流を占めた。しかしその空気は、革命と社会主義の歴史に対する精緻な分析に…

韓国の「民族主義」

同じく、「ポスト〈東アジア〉という視座」より、陳光興の発言。この台湾の批評家は、韓国のナショナリズムが東アジアでもっとも強烈なものであり、そこにはマッチョな体質や父権制などがみられると留保した後でこういう。 韓民族が民主を堅持していること、…

「ポスト〈東アジア〉という視座」より

孫歌、白永端、陳光興編『ポスト〈東アジア〉』所収の三人の対談より、印象的なところをピックアップ。 孫歌 正直に言うと、東アジア問題を語るとき、中国をその中に完全な形で放り込むことはできないのです。中国東部の漢民族による儒教地区だけが東アジア…

アメリカの院生組合 NYUの場合

4月3日のエントリーで書いたように、今NYU(ニューヨーク大で、ティーチング・アシスタント(TA)やリサーチ・アシスタント(RA)の院生たちによるストライキがつづいている。エントリーやコメントを書きながら、日本でこのようなことが起きない理由は何な…

非常感謝!!

建築史家中谷礼仁さんのアセテート編集者日記と、在米美術家池田孔一さんの日記童話/日記でこのGuangzhou Lettersを紹介してくださっているらしい。謝謝! 「らしい」、というのは、なぜかここ数日、うちからアセテートの日記が開けないから。今の宿舎はネッ…

『純粋理性批判』4.1

『純粋理性批判』第一版の「先験的方法論」(岩波文庫では付録2)は、〈私〉=主体に関する四つの誤謬推理を扱っている。その第二の誤謬推理は、〈私〉は「単純」なもの、つまりバラバラの断片ではなく、ひとつの統合された全体であるという観念を巡るもの…

島木健作『生活の探求』(2)

駿介にとって、志村以上に手痛いのは、生活上の恩人であり、パターナリスティックな地主でもある上原の批判だろう。上原は、勉強をしたいという駿介のために色々と骨を折ってきた経緯があるにもかかわらず、学業をやめて農民として働きたちという駿介の希望…

ガンジー主義の可能性

femmeletsさんの日記で紹介されている、ダグラス・ラミス・鶴見俊輔の『グラウンド・ゼロからの出発?日本人にとってアメリカってなーに』(光文社)の一節。 ラミス この間、たまたまガンジーについての本を読んでいたんだけども、一九一九年、インドがまだ…

黒澤明『白痴』

なんといっていいものやらよくわからない。場外ホームランなのか、超弩級のファウルなのかも判断できない。ただ白球が宇宙空間にまで飛んで行ってしまい、自分がとりのこされたのは確かだ。やっぱドストエフスキーはでっかいなあ、というのと、いくら何でも…

島木健作『生活の探求』(1)

当然とっくに読んでいるべきだった『生活の探求』を、ようやく読み始めた。その感想を同時並行で書いてみる。もちろん、この作品は、いわずとしれたもっとも(悪)名高い「転向」小説だ。その主調線は、ほとんど冒頭の部分にはっきりとあらわれている。 彼は…

「未来」、タケリン、阿部知二

先日、日本から荷物が届いた。そのなかに、未来社の広報誌『未来』三月号が入っていた。確かeditorN氏もいつかの日記で書いていたはずだが、この雑誌は今とても充実していると思う。大宮勘一郎という人の連載「大学の余白/余白の大学」は難解でいつも読み通…

うたをうたう

ひょんなことから、妻が勤めている大学附属の語学学校で歌をうたうはめに。いや、授業の一環として。100人ほどの生徒を前に、「真夏の果実」を歌ってきた。かなり恥ずかしかった。ところで、たまに語学学校の授業に出ると、ずいぶん学生の顔つきが違うものだ…

NYU Teaching Assistantストライキと国際民主主義基金

デモはフランスだけで起きているわけではない。 昨年10月から、ニューヨーク大学(NewYork University,以下NYU)で、院生非常勤講師のストライキが続いている。アメリカでは多数の大学院生が、ティーチング・アシスタント(TA)やリサーチ・アシスタント(R…

黒澤明『我が青春に悔いなし』

いろんな意味でおもしろすぎる怪作という印象。タイトルとパッケージから軽い青春喜劇かと思ったらとんでもない。滝川事件(京大事件)を背景に、三十年代のファッショ化の流れに翻弄される女性の姿を描く。ヒロインの恋人のモデルは、まちがいなく尾崎秀実…

DVD買い出し

昨日は、機場路にある、最近できたらしいショッピングセンターへ。映像・音楽関連のソフトを扱うショップが集中している。一軒だけ、古い映画をかなりそろえている店を見つけ、主に黒澤明と溝口健二の作品をあさる。外国映画にもかなり食指をそそられるもの…

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友人femmeletsさんのはてなダイアリーをリンクに追加しました。圧倒的な情報量。ヘンタイ的革命家femmeletsさんの視野の広さと行動力がわかります。 http://d.hatena.ne.jp/femmelets/