越富探検記

前から聞いていた人民北路の越富(yuefu)広場へいってみる。ここにはDVDショップが軒を連ねていると聞いていたのだが、ついてみてびっくり。迷路のようなビルの中にちまちまとしたショップが並び、その半数がフィギュアの店。残りは日本製ゲーム、アイドルのポスター、プラモデルなどなど。つまりはここは広州のアキバだったのだ。もちろん本家ほどの規模はなく、秋葉原の雑居ビルをそのまま一棟持って来たようなものだといったらいいか*1こちらのフィギュア(どこ製?)の腕前はどの程度のものかと思って、写真を撮ったのだが、室内の暗さのせいか、ボケてしまったのでここには載せない。
さて、肝心のDVD屋は三階にあると聞いていたのだが、実際に登ってみると、店などひとつも入っていない。それどころか、しばらく前に引き払ったような、荒涼とした雰囲気が漂っている。仕方がなく浮かない顔で下をうろうろしていると、ぽん引き(?)のおっちゃんがDVD?と聞いてくる。うなずくと、それなら三階にあるからと、店員用の通用口へ案内する。中国の商業ビルというのは、たいてい三四階から上が住居区になっているのだけど、エレベーターで押すボタンはなぜか九階。だいたいおっちゃんのそぶりがどうにもいかがわしい感じなのだ。いかにも、ご禁制の品を扱ってまっせ、という雰囲気(実際、ポルノショップにでも連れて行かれるのか、と疑った)。そして、ついた先はやはり普通のマンションの一室で、人が住んでいる様子もないのに、ボロボロのソファーがぽつねんと置かれているところなどが、これまた何ともアンダーグラウンドな味を醸し出している。ここで身ぐるみ剥がれてもどうしようもねえな*2、などと思いつつ、さらにその先の扉を開けると、なんと、四畳ほどの室内に、数千枚はくだらないDVDが山と積まれているのだった。実際は海賊版なんて、路端でいくらでも売っているのだけど、ここは有名なので警察に目をつけられているということなのだろうか。とにかくこのように地下(というか上階)にもぐって営業しているらしい。
結局、そこで一時間半ほどかけて、二十数枚を選ぶ。お目当ての古い日本映画はあまりなかったが、山中貞雄の『丹下左膳餘話 百萬兩の壺 』があったのが大収穫。その他、中国東北部の庶民の暮らしを描いた傑作ドキュメンタリー『鉄西区』*3、まだ見ていなかった黒澤清の『地獄の警備員』、日本ではいまだに公開が決められない(?)ソクーロフ『太陽』などなど。ジャ・ジャンクーはすべて揃ったし、王家衛(ウォン・カーフェイ)も欲しいものはだいたい入手した。杉本彩ではない、日活の『花と蛇』シリーズがなぜかたくさんあったが、そっちの方*4は詳しくないのでパス。
以下、購入リスト。『丹下左膳餘話 百萬兩の壺 』、増村保造『巨人と玩具』、黒澤清『地獄の警備員』『人間合格』、山内哲也『怪龍大決戦』、林海象『我が人生最悪の時』、今村昌平今村昌平傑作選』、実相寺昭雄『うた』、北野武dolls』、新海誠ほしのこえ』、高坂希太郎『茄子 アンダルシアの夏』、今敏千年女優』、高畑勲『思ひ出ぽろぽろ』、ジャック・リヴェット美しき諍い女』、マイケル・チミノディア・ハンター』、ソクーロフ『太陽』、王兵鉄西区』、王家衛欲望の翼』、『花様年華』、『2046』、呉永剛『神女』、ジョニー・トー『PTU』,監督不明『天下無双』、ジャ・ジャンクー『小武』、『任逍遥』、監督不明『歓迎来到東莫村』。しめて26本、205元(約3000円)なり。

*1:実際にはアキバほどの、オタクでないと居心地が悪くなってしまうような濃厚さはない。幾分原宿はいっているような気もするし。

*2:広州の治安はたいへん悪い。大体はスリ、ひったくりだが。

*3:国内では上映禁止。ただしDVDで出回っているというのだが、見つけられなかった。

*4:SM方面、ということではない。日活ロマンポルノの監督やら女優やらということ。いや、あっちもよく知らないが。