NYU Teaching Assistantストライキと国際民主主義基金

NYUでのデモ風景

デモはフランスだけで起きているわけではない。
昨年10月から、ニューヨーク大学(NewYork University,以下NYU)で、院生非常勤講師のストライキが続いている。アメリカでは多数の大学院生が、ティーチング・アシスタント(TA)やリサーチ・アシスタント(RA)として、教育活動に携わっている。彼/彼女らは単なる補助要因ではなく、自分で講義も研究活動も行う。つまり、アメリカの高等教育は、TAらの低廉な労働力によって維持されているわけだ(これは日本の非常勤講師とまったく同じ)。
しかし、TAらの雇用条件は悪く、医療保険もない。そのため、2000年にNYUで大学院生の労働組合が認められたことをきっかけに、私立大学院生の組織化が進んだという。(詳しくはhttp://www32.ocn.ne.jp/~everydayimpress/New_Folder/explain6.htm)そこには、働く院生も「労働者」であり、団結権、団体交渉権を有するという、クリントン政権下の合意があった。
ところが、ブッシュ政権下で変質したNLRB(全国労働関係局)は、院生の労働組合を認めない方針を打ち出す。そして院生組合発祥の地であるNYUで、労働組合の認知を求めてストライキが始まった。
詳しくは、
NLRBが、TAの団結権を否定:http://www32.ocn.ne.jp/~everydayimpress/New_Folder/article276.htm
ニューヨーク大学、TAとの労使交渉の打ち切りを正式決定:http://www32.ocn.ne.jp/~everydayimpress/New_Folder/article363.htm
ニューヨーク大学非常勤ストライキhttp://www.labornetjp.org/news/2005/1133696353643JNK
続報NYUスト:躊躇する大学、耐える非常勤:http://www.labornetjp.org/news/2005/1134024212129JNK/
NYU学長への抗議署名がこちらでできる:http://new.petitiononline.com/mod_perl/signed.cgi?tosexton
僕はたまたま友人がNYUに留学しており、TAとしてストに参加していたために、その経緯は前から聞いていた。最近届いたメールによると、ストが長期化するにつれて、TAたちも苦しい闘いを強いられているという。当然、見通しは明るくないはずだ。
だが一方で、日本で大学院生、非常勤講師といった層が、自分たちで労働組合を組織し、半年に及ぶストを闘えるか、と想像すると、ほとんど不可能だろうな、という気がする。能力というより、想像力がそのような方向には働かないだろう。いうまでもなく(僕自身身にしみて感じてきたわけだが)、日本の大学院生というのは、経済的にはフリーターと並ぶロウアークラスであり、将来安定した職に就ける可能性も低い。低賃金,使い捨ての非常勤講師にさえなかなかなれず、なったらなったで、週にひとつやふたつの授業ではとても生活できない。このような高学歴失業者の問題をこれからどうするのか。ニートばかりではない。
だがこのような状況にも関わらず、日本の院生・非常勤といった層には、決定的に組織化,主体化の意志も技術も欠けていると思う。いやさらに、日本で院生であることは、どのような社会的意義も役割も持たず、どこまでも孤独に脱社会化していく自分に必死で耐えつづけることだという気すらする。僕の思い込みかもしれないが、日本の院生が生き生きとした人間関係や活発な言論空間(どちらも研究の持続には欠かせないものだ)を、自分のまわりに組織するためには、人並みはずれたアクティヴィティやスキルを必要とするのではないか。何か他人事のように書いているが、そんなつもりはない。僕自身、自分の存在の無意味さに耐えられず、中国へ飛び出したようなものだ。今の日本の若年層の悲しいほどの分断、孤立を考えるたびに、院生時代の索漠たる気分を思い出して、いったいどうしたものかと思うのだ。
さて、実は本題はほかにある。そのNYUストに参加している友人から、最近次のような運動を手伝っていると連絡があった。
The INTERNATIONAL ENDOWMENT FOR DEMOCRACY (I.E.D):http://www.iefd.org/
日本語版はこちら:http://www.iefd.org/lang/ja01.php
「国際民主主義基金」。「民主主義」の輸出を国是とする民主主義とはきわめて縁遠いとある超大国に、民主主義を根付かせるための基金。世界中からつのった寄付を、国内で民主主義のために努力している団体に提供するという。つまり、民主主義の逆輸入。何か、昔の日本の米不足を思い出すような。役員にはゴア・ヴィダル/GORE VIDAL、ラムゼイ・クラークRAMSEY CLARK、イマニュエル・ウォーラーステイン/IMMANUEL WALLERSTEIN、デヴィット・ハーヴェイ/DAVID HARVEYといった錚々たる顔ぶれが並んでいる。ハリー・ハルトゥーニアンもコミットしているらしい。
というわけで、もし興味をお持ちの方がいたら、上記のウェブサイトの情報を知人や関心を持ちそうな人にアナウンンスしてください。ウェブにはアラビア語ベンガル語まで、各国語版もそろっています。
I.E.Dウェブサイトより

私達の計画の成否は、世界中の何百万人もの人々にこの計画を知らせることにかかっています。従って、もし私達の活動に賛成し、それが重要であると考えていただけるのなら、このアピールを、特にアメリカ以外の友人・知人、ウェブサイトやブログ、掲示板等に送信してください。くれぐれも、インターネットメディアを介した連帯を軽視しないでください。2004年の大統領予備選挙の際、The MoveOn Organization は、ハワード・ディーンのために、この方法だけで1000万から2000万人のアメリカ人に影響を与えたと言われていますが、私達の計画はこの方策を全世界にまで拡げる初めての試みでしょう。確かにこれは、どうしても必要とされるアメリカの民主化に全世界が参加するようにインターネットを用いる初の試みです。問題のこの上なく深刻な性質と、その問題が及ぶ全世界的な範囲は、こうした方法を必須とするものです。インターネットという新しい技術はそれを可能にします。しかし私達の計画が実行されるにはなお、あなたのささやかな救いの手が必要なのです。