北京の印象

5日間北京を訪れて、あちこちをぶらぶらしてきた。友人のSさんの家に泊めていただき、Sさんの知人の若い研究者に紹介してもらったり、Sさんの先生に街を案内してもらったり、毎晩遅くまでSさんにいろいろと話を聞かせてもらったり、彼には本当に感謝するしかないのだった。
故宮や長城といった観光地もそれなりに愉しかったのだけど、そこへ向かう途中のバスからの風景や、もともと芸術家コミューンだった大山子芸術地区などがそれ以上におもしろかった。大山子では、ここ20年間くらいのあいだに徐々に勃興してきたモダンアートが、中国社会に根付く段階を飛び越えて、直接国際的なアートマーケットにものすごい勢いで取り込まれつつある様子が実感できて、結局その境目で仕事をしている人が興味深い。個々の作品の質に関しては、決して圧倒的というわけではないのだけれど、今の中国ならでは、という感じがする。
北京というのは、とにかく空間がすかっと抜けているという印象で、広州とはぜんぜんちがう。人も広州人がどこかでれっとしていて、人なつこく陽気なのと比べると、どこか背筋が通っていて、あまりべたべたとしないような気がしたがどうか。5日もいて色んな人とあったりすると、それなりに思うところ、感じたことというのはたくさんあるのだが、いざ言葉にしようとすると何も出てこない。それよりも、北京の光の透明さ、風、空の広がり、といったものだけがどこまでも鮮明さをましていくのだった。