韓国の「民族主義」

同じく、「ポスト〈東アジア〉という視座」より、陳光興の発言。この台湾の批評家は、韓国のナショナリズムが東アジアでもっとも強烈なものであり、そこにはマッチョな体質や父権制などがみられると留保した後でこういう。

韓民族が民主を堅持していること、それは世界中が学ぶに値することなのです。今日、ソウルの強大な市民運動や強固な組合組織をはっきりと目にするわけですが、隣国のいわゆる社会主義国家中国、またはもう一方の、アジア第一と自称する日本は、それらの社会・民主運営のレベルにおいて、韓国のそれには遠く及ばないのではないでしょうか。それらを動かすエネルギーは、ナショナリズム民族主義の積極的なエネルギーとまったく無関係だといえるでしょうか。外部のものとして、韓国のナショナリズム民族主義に対する懸念は、日本および中国大陸のそれに対する懸念より、はるかに低いといえるでしょう。

僕は韓国のナショナリズムについて何ほどのことも知らないが、ずっと興味は持ちつづけてきた。そして、現在の韓国の活発な文化生産が、八十年代の民主化運動と、そこに内在するナショナリズムと関わっているだろうと思ってきた。韓国では、民族分断という状況の中で、ナショナリズムがむしろ反国家、反独裁の意味を持ってきた。もちろん一方で国家主導の強力な愛国主義の強制があったわけだが、ナショナリズムがそれに対抗するための拠点となってきた。僕が現在知りたいのは、そうしたナショナリズムが、韓国社会で現在どのように変容し、どのように生き続けているか、だ。